最近、国内でも服用する女性が増えてきた「ピル」。
聞いたことはあっても、ピルの仕組みや具体的な効果は分からない方も多いのではないでしょうか?
ピルと一口に言っても、低用量ピルや中用量ピル、アフターピルなどさまざまで、種類によって配合成分やその効果も異なります。
ピルは避妊だけでなく、生理日の移動や月経困難症、PMS(月経前症候群)の治療にも役立つことが特徴です。
今回はピルの仕組みや種類を中心に、効果や副作用についても幅広く解説します。この記事を読めば、ピルの全体像がつかめるはずです。
そもそもピルとは何をするもの?
ピルを簡単に言うと「女性ホルモンが含まれた飲み薬」です。
数ある避妊法の中でも最も高い避妊効果を持つピルですが、効果はそれだけではありません。
例えば、生理痛がひどくて日常生活に支障をきたす「月経困難症」や、激しい生理痛や下腹部の痛みを伴う「子宮内膜症」などの治療にも利用されます。
さらにピルは、生理周期を安定させる役割もあるため、生理前に心身ともに不調が現れるPMS(月経前症候群)や、より症状の重いPMDD(月経前不快気分障害)の治療にも役立つのです。
またニキビの改善にも効果があるといわれています。
生理が軽くなる?ピルの仕組み
通常、卵子が成熟して「エストロゲン」が上昇すると、脳が反応して排卵を促すホルモンが分泌されます。ピルにはエストロゲンと黄体ホルモンが含まれており、内服することで 脳下垂体に働きかけ、卵胞の発育が抑えられることで排卵が抑えられて排卵が起こらなくなります。 またピルを服用していると、子宮内膜が通常より薄くなり(厚くならない)ため、月経血量がへり、痛み物質の分泌も抑えられるため、月経痛も軽減されます。いわゆる月経が軽くなります。
ピルの歴史と内服国際比較
1960年代にアメリカで「経口避妊薬」として認可されたピルですが、当時は高用量であったため、血栓症などのリスクも問題視されていました。しかしそれは次第に改善され、1973年には低用量ピルが開発され、避妊法として世界的に主流となりました。
一方で、各国の普及率には顕著な差があるのが現状です。フランスでは33.1%ですが、日本ではわずか2.9%にとどまっているのです。
日本では医師の診断が必須であり、他国と比べて入手が難しいことが理由として挙げられます。
普及率の低さから、日本は「ピル後進国」とも称されています。
避妊だけじゃない!ピルの主な効果とは?
低用量ピルの避妊効果はきちんと毎日服用する(理想的な服用)で、99.7%以上とされています。飲み忘れがなければ最も効果的な避妊法であると言えます。
それだけでなく、ピルは生理日の移動にも使われます。旅行や大事なイベント等と生理が重なる場合、ピルの服用によって生理日を調整することが可能です。
また月経困難症や子宮内膜症、生理前に心身の不調を引き起こすPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)の治療に使用されるなど、ピルの効果は多岐にわたります。
ピルの種類は?
黄体ホルモンによる分類
エストロゲン(女性ホルモン)はEE(エチニルエストラジオール)
黄体ホルモンの種類により分類
種類 | 黄体ホルモン(プロゲステロン) | 商品名 LEP(保険適応) |
商品名 OC(自費) |
特徴 |
第 一 世 代 ピ ル |
ノルエチステロン(NET) |
ルナベルLD |
シンフェーズ |
・最も長く使用歴あり |
第 二 世 代 ピ ル |
レノボルゲストレ(LNG) |
ジェミーナ |
トリキュラー |
・不正出血が少ない |
第 三 世 代 ピ ル |
デゾゲストレル(DSG) |
ファボワール |
・男性ホルモン作用が少なくニキビ・体毛の増加抑制に効果を発揮しやすい
|
|
第 四 世 代 ピ ル |
ドロスピレノン(DRSP) |
ヤーズ配合錠 |
・他の世代のピルと比較して黄体ホルモン量が少ない |
・新薬 アリッサ配合錠 2024年12月から保険適応での処方開始
女性ホルモンが従来のEEではなく天然型のE4を使用していることが特徴
女性ホルモン:エステトロール(E4)+ドロスピレノン(DRSP)
・LEP・・低用量エストロゲン・プロゲステロン配合薬 保険適応
*:LEPのジェネリック医薬品
・OC・・(低用量)経口避妊薬 保険適応外(自費)
ホルモン容量での分類
種類 | エストロゲン(EE) | 商品名(保険適応) | 商品名(自費) | 特徴 |
中用量
|
0.05㎎以上 |
プラノバール
|
プラノバール |
・月経困難症、機能性不正出血などの治療で使用(保険) |
低用量 |
0.05㎎以下 |
ルナベルLD/ULD |
トリキュラー アンジュ ラベルフィーユ ファボワール マーベロン |
・一般的なピル |
超低用量 | 0.03㎎以下 | ヤーズ配合錠 *ドロエチ配合錠 ヤーズフレックス |
・ホルモン量が極めて少なく副作用が少ない ・避妊効果の実証なく、避妊目的では使用されていない |
そのほかの効能を有するピル
種類 | ホルモン | 商品名(保険適応) | 商品名(自費) | 特徴 |
アフターピル
|
レノボルゲストレル |
ノルレボ |
・緊急避妊薬 |
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ミニピル |
黄体ホルモン |
|
日本では未承認 (2025年1月時点では) |
・血栓症のリスクが低減 |
保険もしくは自費の違い
OC・・(低用量)経口避妊薬 〔自費〕
避妊目的
LEP・・低用量エストロゲン・プロゲステロン配合薬 〔保険〕
月経困難症治療目的
「ピル」と一口にいっても、低用量ピルや超低用量ピル、中用量ピル、アフターピル、ミニピルなどの種類があります。
それぞれ女性ホルモンの配合量が異なり、それに伴って得られる効果や服用目的も多様です。以下では5つの種類について、効果と副作用について解説していきます。
低用量ピルとは
一般的に「ピル」と言えば、この低用量ピルを指します。
エストロゲン(卵巣ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類の女性ホルモンを含むピルで、主に避妊や月経困難症、子宮内膜症の改善に使用されます。
中容量ピルのホルモン作用を応用しながら、より副作用が少なく、適切な効果が 発揮でき、長期間安全に服用ができることを目的として開発されたものです。
避妊目的で服用する場合には保険適用外、月経困難症や子宮内膜症で服用する場合には保険適用となります。
避妊以外にも!低用量ピルの主な効果は?
低用量ピルの主な効果は「避妊」です。飲み忘れることがなければ、99%以上とかなりの高確率で妊娠を防ぐことができ、コンドームなど他の避妊法との併用は必要ありません。
また排卵が止まることで、女性ホルモンの変動が少なくなります。その結果、女性ホルモンによって引き起こされる月経痛や生理不順、PMS(月経前症候群)や肌荒れの改善に繋がります。
低用量ピルに副作用はあるの?
飲み始めはホルモンバランスが崩れ、軽い吐き気や眠気、下腹部痛、胸の張りなどの副作用が起こる可能性があります。症状はさまざまで、まったく感じない方もいます。
飲み続けることで改善されることがほとんどですが、症状が悪化する場合や数か月経っても治まらない場合には、医師に相談しましょう。
超低用量ピルとは
超低用量ピルとは、含有されるエストロゲンが低用量ピルよりも少ない薬です。
厳密にはエストロゲンが0.05mg以下のものが低用量ピル、0.03mg以下のものを超低用量ピルと言います。
超低用量ピルは避妊効果に関する試験が少なく、避妊目的ではあまり服用されていません。一方で生理痛や生理不順の改善には役立つことが分かっています。
子宮内膜症の治療にも!超低用量ピルの効果は?
超低用量ピルには、避妊をのぞいて低用量ピルとほぼ同様の効果があります。
1つ目は生理痛の緩和です。超低用量ピルは子宮内膜を薄くする効果があり、子宮内膜が剥がれ落ちる際の痛みが軽減されます。経血量も少なくなるため、鎮痛剤の必要がなくなる方もいます。
また、ホルモンバランスが整い、生理不順や肌荒れの改善にも役立ちます。
超低用量ピルに副作用はあるの?
含まれる女性ホルモンの量が少ないため、副作用のリスクが低いことが特徴です。低用量ピルでは吐き気などの副作用が見られる方が、超低用量ピルを選択されることもあります。
しかし、超低用量ピルでも5%以上の確率で頭痛や吐き気などの副作用が出る場合があります。これらの副作用は、薬に慣れることで改善されていくケースがほとんどです。
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中用量ピルとは
中用量ピルは、低用量ピルと比べて含まれるエストロゲンの量が多いことが特徴です。中用量ピルにはエストロゲンが0.05mg以上含まれています。
中用量ピルは、主に「生理日の移動」を目的に服用されます。
エストロゲンが多い故に副作用が起こりやすいため、日常的に服用が必要となる避妊にはあまり使用されていません。
生理日を移動できる!中用量ピルの主な効果は?
中用量ピルの主な効果は「生理日の移動」です。
大事なイベントや仕事と生理が重なってしまうときに服用することで、生理を早めたり、逆に遅らせたりすることが可能です。
具体的には、中用量ピルの服用によって女性ホルモンのバランスが変化し、子宮内膜の形成や排卵を抑えます。それによって、生理日のコントロールが可能になるのです。
中用量ピルに副作用はあるの?
エストロゲンの含有量が多いため、副作用も強く出る傾向にあります。
主な副作用として、吐き気や頭痛、胸の張りなどが挙げられます。
市販薬と併用できますが、「アセトアミノフェン」が含まれる頭痛薬には注意が必要です。
中用量ピルと相性が悪いため、副作用が強まる可能性があります。
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アフターピルとは
アフターピルは、コンドームが破損してしまったときや、低用量ピルの服用を忘れてしまった後の「緊急避妊薬」です。主成分は、女性ホルモンの1種であるレボノルゲストレルなどの黄体ホルモンです。
定期的な服用で排卵を抑制する低用量ピルとは異なり、性行為の「後」に緊急的に避妊ができる点が特徴です。「最後の避妊手段」とも言われます。
緊急避妊薬!アフターピルの効果は?
種類にもよりますが、24時間内の服用で80~95%の避妊効果があると言われています。
排卵前に服用した場合には排卵を遅らせ、排卵後に服用した場合には子宮内膜を変化させて精子の進入を抑えることで、受精卵が着床するのを防いでくれます。
国内で認可されている「レボノルゲストレル」は72時間以内に服用するピルです。
中には、120時間以内に1錠服用すれば効果を得られるピルもあります。(ただし、海外のもので2025年1月時点では日本では未承認です。)
また、服用後は次の生理がくるまでは、性行為を行わないことが大切です。
アフターピルに副作用はあるの?
吐き気や嘔吐、頭痛、胸の張りなどが副作用として挙げられます。特に吐き気や嘔吐は最も一般的で、多くの方が経験する症状です。
副作用の中でも、服用後2時間以内に嘔吐した場合は注意が必要です。
薬が十分に吸収されず、避妊効果が得られない可能性があるためです。
嘔吐してしまった場合には再度服用を検討するか、医療機関に相談をしましょう。
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緊急避妊薬アフターピルの効果と副作用は?他のピルでも避妊できる?
ミニピルとは
ミニピルとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)を含まず、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを含む新しいタイプのピルです。
低用量ピルに含まれるエストロゲンは、血液を固まりやすくする作用があります。そのため、40歳以上の方や肥満体型の方などは、原則として低用量ピルの服用はおすすめできません。
一方で、ミニピルはエストロゲンを含まないため、これらの方でも服用が可能です。
※日本では未承認(2025年1月時点)のため、保険適用外になります。
ミニピルの効果は?低用量ピルとの違いも
ミニピルも低用量ピルと同様、正しく服用すれば99%の避妊効果があります。
低用量ピルとは避妊の仕組みが異なります。低用量ピルは排卵を抑制することで避妊効果を発揮する一方、ミニピルは子宮頚管の状態を変化させて精子の進入を防ぎます。
さらに避妊以外にも、月経困難症や子宮内膜症の改善にも役立つとされています。
ミニピルに副作用はあるの?
低用量ピルよりも副作用が出にくいと言われています。エストロゲンを含まないため、血栓症リスクのある方(喫煙者や40歳以上の方、肥満体型の方)でも服用が可能です。
一方で、ミニピルは「決まった時間」に服用する必要があり、低用量ピルよりも厳密です。12時間以上遅れると効果が得られなくなる可能性もあるため、注意しましょう。
ピルを服用する際のリスク
ここまでピルの副作用について解説しましたが、ピルの最大のリスクは「血栓症」です。
ここでは、血栓症のリスクについて詳しく解説していきます。
タバコを吸う方は要注意!血栓症のリスクが高まる
ピルに含まれる女性ホルモン「エストロゲン」には、血を固まりやすくする作用があります。
そのためピルを服用すると、通常よりも血栓症のリスクが1.2倍高くなると言われています。
具体的には、ピルを飲んでいない人が血栓症を発症する確率は1万人に1~5人であるのに対して、ピルを飲んでいる方は3~9名というデータもあります。
タバコを1日15本以上吸う方や、40代後半の方、肥満症の方などは特に注意が必要です。服用前には必ず医師に相談しましょう。
ピルはどこで入手できる?
ピルを入手するには、必ずクリニックや病院で医師の診察を受ける必要があります。
現在の健康状態や服用の目的(避妊や生理日の移動など)を確認した上で、適切なピルが処方されます。
最近ではオンライン処方も普及しており、自宅にいながら診察を受けることが可能になりました。忙しくて来院できない方も、ピルの購入ができるようになったのです。
ピルは薬局で購入できるか?
現在の日本では、薬局でピルを購入することはできません。ピルは「医療用医薬品」に分類されており、医師の診察なしでは購入できないためです。
一方でアフターピルなどの緊急避妊薬は、服用までの時間が早ければ早いほど避妊効果が高くなります。望まない妊娠を避けるためにも、薬局での購入が求められており、現在、検討が進められます。
低用量ピルの相場(自費)はいくら?
避妊目的で服用する場合、ピル代は自費です。
1シート(28日分)の相場は自費で2,500円~3,500円と言われています。
一方で月経困難症や子宮内膜症の治療で服用する場合は、保険が適用されます。1シート600円~3,000円程度が相場です。
初回は上記に加えて、初診料が数百円~2,000円程度かかるケースがあります。
初診料が無料のクリニックもありますので、事前に確認しましょう。
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超低用量ピルの相場(自費)はいくら?
超低用量ピルの相場は、1シート(28日分)あたり自費で4,500円~10,000円とされています。
低用量ピルと比べて高めで、相場の幅が大きいのが特徴です。
副作用が比較的起こりにくく、最長120日間生理を止められるタイプの超低用量ピルの相場はやや高めになっています。
オンライン処方の場合は送料がかかるケースもあるので、事前にチェックしましょう。
中用量ピルの相場はいくら?
中用量ピルの相場は、1シート(28日分)あたり約4,000円~7,000円です。
しかし、生理日の移動を目的に服用する場合は、生理を避けたい日程に合わせて7錠などの必要な分だけ処方されることがほとんどです。
7錠は2,000円前後、14錠だと4,000円前後で処方してもらえることが多いでしょう。
アフターピルの相場はいくら?
アフターピルは1錠あたり6,000円~20,000円が相場です。
種類によって性行為から服用までのタイムリミットが決められており、一般的に72時間のピルよりも120時間のピルの方が金額は高い傾向にあります。
また速達プランや当日配送プランを利用する場合、別途料金を支払えば、当日中に配送してもらえるクリニックもあります。
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ミニピルの相場はいくら?
ミニピルの相場は、1シート(28日分)あたり3,000円~4,000円と言われています。
ピルを処方される際に、血圧や体重測定、血液検査が行われるケースもあります。初診料の他、これからの費用がかかる可能性がある点も覚えておきましょう。
Q&A
Q1.ピルを飲み忘れたらどうなる?
前回の服用から24時間が経過した場合には、早いタイミングで忘れた分を服用しましょう。それ以降は通常通りの服用で問題ありません。
48時間経過してしまった場合には、直近のものをなるべく早く服用しましょう。その後は7日連続で服用できるまで、ピル以外の避妊法と併用しましょう。
Q2.不正出血がおこる場合はある?
ピルの服用によってホルモンバランスが変化すると、不正出血が起こる可能性があります。特に服用を開始したばかりの頃によく見られます。
1~3ヵ月で落ち着くことがほとんどであるため、過度な心配は必要ありませんが、出血が続く場合には医師に相談しましょう。
服用時間をきちんと守ることで、不正出血が防げる場合もあるので、きちんと服用時間を守ることを心がけてください。
Q3.併用NGの薬はあるの?
抗生物質や抗てんかん薬、抗ウイルス剤などは、ピルの効果を低下させる可能性があると言われています。
風邪、発熱などで病院を受診する際は、必ずピルを服用していることを医師に伝えてください。
また、アセトアミノフェンが含まれる鎮痛剤にも注意が必要です。併用が禁止されているわけではありませんが、中用量ピルの場合は副作用を強くする可能性があると言われています。