低用量とどう違う?中用量ピルの使用目的と月経移動の効果を解説

2025.01.11

低用量とどう違う?中用量ピルの使用目的と月経移動の効果を解説

大事な仕事や旅行、試験と生理が重なってしまったとき、「中用量ピル」で生理日の移動ができることをご存じですか?

中用量ピルは主に「月経の移動」を目的に処方され、生理のタイミングを早めたり遅らせたりすることができます。

ただし、女性ホルモンの含有量が多いため、吐き気や頭痛などの副作用が起こりやすいのが特徴です。

この記事では中用量ピルの使用目的を中心に、その効果や副作用について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

そもそもピルとは?仕組みと種類

ピルとは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)の2種類の女性ホルモンを含む飲み薬です。

一般的に「ピル」と呼ばれるのは「低用量ピル」で、服用することで排卵が抑制され、妊娠を防ぐ効果があるため、主に避妊目的で使用されます。

効果の仕組み

また、「中用量ピル」は生理日の移動に使用され、「アフターピル」は性行為後に緊急避妊を行うものです。これらは大きく分けて5つの種類があり、含まれる女性ホルモンの量や効果もそれぞれ異なります。

ピルの種類 特徴 主な効果 主な副作用
低用量ピル エストロゲンとプロゲスチンを含む、最も一般的なピル 避妊、月経痛の緩和、月経周期の調整 吐き気、頭痛、胸の張り
超低用量ピル エストロゲンの含有量が少なく、副作用が軽減されたピル 月経痛の緩和、副作用軽減 軽度の吐き気、頭痛
中用量ピル エストロゲンが多く、強力なホルモン効果を持つピル 生理日の移動 吐き気、頭痛、血栓リスクの上昇
ミニピル プロゲスチンのみを含み、エストロゲンを含まないピル 避妊、授乳中でも使用可能 不正出血、ニキビ
アフターピル 性行為後に緊急避妊のために使用するピル 避妊、性行為後に妊娠を防ぐ 吐き気、頭痛、ホルモンバランスの急激な変化

月経移動に使える!中用量ピルとは?

中用量ピルとは、低用量ピルよりも含まれるエストロゲン(卵胞ホルモン)の量が多いピルです。

低用量ピルが主流となる前は、中用量ピルが一般的なピルとして広く使用され、避妊目的で利用されていました。しかし、エストロゲンの含有量が多いため副作用が出やすく、そのリスクが問題視されるようになりました。

現在では、ほぼ毎日服用が必要な避妊目的ではほぼ処方されておらず、短期間のみの服用で済む「生理日の移動」を目的として使われることが多くなっています。

どっちが良い?低用量ピルや他のピルとの違い

ピルの種類

低用量ピルとの大きな違いは、エストロゲン(卵胞ホルモン)の配合量です。

低用量ピルが0.030.035mg程度であるのに対して、中用量ピルは0.05mgよりも多く含まれています。

低用量ピルはエストロゲンの量が少ないため、副作用が少なく、長期間での服用が可能です。

一方、中用量ピルはエストロゲンの量が多いため、効果も強く出ますが、副作用も現れやすいのが特徴です。

低用量ピル 中用量ピル 超低用量ピル アフターピル ミニピル
ホルモン含有量 エストロゲン量が少ない(0.03~0.035mg程度) エストロゲン量が中程度(0.05mg以上) エストロゲン量が非常に少ない(0.02mg以下) 緊急避妊用の高用量ホルモン エストロゲン含有なし、プロゲスチンのみ
主な用途 避妊、月経不順の改善、子宮内膜症の改善、ニキビ治療 生理日の移動、月経困難症の治療、緊急避妊 避妊、月経周期の改善 緊急避妊のみ 避妊(授乳中やエストロゲンが使えない場合)
服用頻度 万が一(数年単位)での摂取が可能 一時的な使用が多い(特定の治療や生理調整) 長期間の服用が可能 緊急時にのみ1回の服用 毎日服用
副作用の頻度 一般的に副作用は少ない 低用量ピルより副作用が出る可能性が高い 副作用が少ない傾向 一時的な副作用の可能性がある 副作用が少ないが、不正出血が発生することがある
避妊効果 高い(99%:性行為前に摂取) 高い(99%:性行為前に摂取) 高い(98~99%:性行為前に摂取) 非常に高い(95~98%:性行為後に摂取、時間依存) 高い(95~99%:性行為前に摂取)
  • ※低用量ピル・中用量ピル・超低用量ピル・ミニピル:性行為前に継続的に摂取することで避妊効果が期待できます。
    ※アフターピル:性行為後に服用する緊急避妊薬で、服用が早いほど避妊効果が高く、時間経つと効果が低下します。

低用量ピルでも生理日の移動は出来る?

生理日を早める場合には低用量ピルまたは中用量ピル、生理日を遅らせるには中用量ピルを服用します。

生理日を早めたい場合

低用量ピルで生理を早める場合

低用量ピルで生理を早める場合

次の生理までにある程度の期間がある場合には、低用量ピルで早めることが可能です。

一つ前の生理が始まってから、5日目までに低用量ピルの服用を開始します。14日間服用した後にピルの服用を中止すると、2~3日で生理が来る仕組みです。

中用量ピルで生理を早める場合

中用量ピルで生理を早める場合

一つ前の生理が始まってから5日目までに中用量ピルの服用を開始し、最低10日間は連続して服用します。服用を中止するとと2~3日で生理が来ます。

次の生理までに期間の期間が短いときや、14日以上連続して飲むことが出来ない場合は中用量ピルが推奨されます。

生理を遅らせたい場合

遅らせたい場合には、中用量ピルを服用します。

生理を遅らせたい場合

中用量ピルで生理を遅らせる場合の服用方法

生理予定日の5~7日前から中用量ピルを飲み始めると、服用を中止した2~3日後に生理が来ます。

最長で7日間、遅らせることが可能です。

「生理を遅らせる」には、女性ホルモンの供給を維持する必要がある

体内の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲスチ)のレベルが急激に下がると、子宮内膜が剥がれ落ち、生理が始まります。

そのため、生理を遅らせたい場合は、ホルモンの供給を一定期間高く維持する必要があります。

中用量ピルにはエストロゲンやプロゲスチンが多く含まれるため、ホルモンのレベルをより強力に維持できます。低用量ピルで生理を遅らせることも可能ですが、短期間での調整が必要な場合には、女性ホルモンの配合量の多い中用量ピルが処方される場合が一般的です。

低用量ピル服用中に生理日を遅らせることはできる?

第1世代3相性シンフェーズ

低用量ピルを使用した生理移動方法

第2世代3相性トリキュラー、アンジュ、ラベルフィーユ

第3世代1相性 マーベロン、ファボワール

日常的に低用量ピルを服用している方は、服用方法を調整することで、生理日を遅らせることが可能です。

低用量ピルは21日の実薬服用期間と7日間の休薬期間(または偽薬服用)があり、28日分が1シートになっています。

生理日を遅らせたい場合には、休薬期間を取らずに、次のシートから実薬を服用することで、生理を遅らせることができます。

休薬期間を飛ばすことで、ホルモン供給が維持され、子宮内膜が剥がれ落ちる(生理が来る)タイミングを遅らせることができる仕組みです。

中用量ピルの使用目的

中用量ピルは、生理日の移動のほか、避妊や月経困難症の治療にも使われることもあります。

ここでは中用量ピルの使用目的について詳しく解説します。

生理日の移動

生理日を移動させたい場合には中用量ピルが処方されます。

中用量ピルを服用すると、生理日を遅らせるだけでなく、早めることも可能です。ただし、生理日を早めたい場合には、最低10日間連続で服用する必要があるため、スケジュール管理が重要になります。

生理日の移動を希望する場合は、余裕を持って医療機関を受診しましょう。

避妊&緊急避妊

低用量ピルと同様、中用量ピルにもほぼ100%に近い避妊効果があります。

ただし、エストロゲン量が多いため副作用が出やすく、現在では低用量ピルが一般的に使用されています。

中用量ピルは、緊急避妊薬として使用されることもあり、性行為の後72時間以内に服用することで、80%以上の避妊が期待できると言います。

服用するタイミングが早ければ早いほど、避妊効果は高くなります。

ただし、緊急避妊薬としては、より効果の高い「アフターピル」の方が一般的に使用されています。

月経困難症の改善

月経困難症とは、生理中におこる我慢できないほどの下腹部痛や吐き気などの症状をいいます。ホルモンバランスの乱れや、子宮内膜症などの疾患が原因で引き起こされることがあります。

中用量ピルはホルモンを一定に保ち、排卵を抑える作用があるため、月経困難症の改善に使用されることもあります。

ただし、低用量ピルのほうが副作用が少なく、長期間にわたって安全に服用できるため、現在では低用量ピルが治療の第一選択肢になることがほとんどです。

中用量ピルの種類(プラノバール)

現在日本で処方されている中用量ピルは「プラノバール」(2025年1月時点)のみです。

過去には「ソフィアA」という日本製の中用量ピルもありましたが、現在は販売中止となっています。

ピルの選び方のコツ

ピルには中用量ピルのほかに、低用量ピル、超低用量ピル、アフターピル、ミニピルなど主に5種類があります。

自分の体質や服用目的に合ったピルを選ぶためにも、それぞれの特徴や主な効果、副作用を把握しておきましょう。

ピルの種類 特徴 主な目的 副作用・注意点
低用量ピル エストロゲンとプロゲステロンを含み、ホルモン量が比較的少ない。毎日服用することで避妊効果がある。月経不順や生理痛の軽減にも役立つ。 避妊、月経痛の軽減、月経不順の改善 吐き気、頭痛、むくみ、血栓症のリスクあり。服用のタイミングを守る必要があり、飲み忘れると避妊効果が下がる。喫煙者や高血圧の人は注意が必要。
超低用量ピル 低用量ピルよりもさらにホルモン量が少なく、体への負担が少ない。エストロゲンの量が少ないため、副作用が軽減されることがある。 月経困難症や子宮内膜症の治療、副作用が心配な人向け 副作用は少ないが、ホルモン量が少ない分、月経周期が安定しにくいこともある。
中用量ピル ホルモン量が多く、月経移動や緊急避妊などに使われる。短期間で強力なホルモン作用があるため、通常は避妊目的には使われない。 月経移動、緊急避妊 ホルモン量が多いため、吐き気、頭痛、むくみ、情緒不安定などの副作用が出やすい。長期間の使用は推奨されない。
アフターピル 性交後72時間以内に服用することで妊娠を防ぐ緊急避妊薬。エストロゲンとプロゲステロンが大量に含まれ、妊娠成立を防ぐが、避妊率は100%ではない。 緊急避妊 一時的な副作用として、吐き気、頭痛、めまいなどがある。避妊失敗時の一時的な使用に限られ、日常的な避妊には使わない。
ミニピル プロゲステロンのみを含むピル。エストロゲンを含まないため、授乳中の女性やエストロゲンの副作用を避けたい人向け。毎日同じ時間に服用する必要がある。 授乳中の避妊、エストロゲン不耐性の人向け 飲み忘れるとすぐに効果が失われるため、時間厳守が必要。ホルモン量が少ない分、月経不順が起こりやすいことがある。

避妊を目的の場合、一般的には低用量ピルが処方されますが、授乳中の方やエストロゲンに耐性がない方には、エストロゲンの含まれないミニピルが処方されます。

超低用量ピルは、低用量ピルよりもエストロゲンの含有量が少ないピルです。避妊目的での使用はできませんが、副作用が少ないことが特徴で、月経困難症や子宮内膜症の治療に用いられます。

医師に相談する際のチェックポイント

以下のチェックポイントを押さえておくと、適切な診断やアドバイスが受けられるでしょう。

使用目的を伝える

まず、何のためにピルを服用したいのかを明確に伝えましょう。

月経の移動や避妊、月経不順の改善など、具体的な要望を伝えることで、医師が適切な処方をしやすくなります。

健康状態や既往歴を伝える

中用量ピルは、高血圧の方や糖尿病の方には処方できない可能性があります。自身の体調や持病について、必ず伝えることが大切です。

また、服用中の薬やサプリメントがある場合には、併用しても問題ないかどうかを確認しましょう。

心配事・疑問点の解消

副作用やリスク、飲み忘れたときの対処法について疑問がある場合は、事前に相談し、不安を解消しておきましょう。

ない人もいる?中用量ピルの副作用

中用量ピルは、低用量ピルよりも副作用がやや強く出ると言われています。

ただし、副作用の症状や発症のタイミングは人それぞれで、中には全く副作用を感じない方もいます。

吐き気・嘔吐

中用量ピルの服用による女性ホルモンの急激な変化が、消化器系に影響を与え、吐き気を引き起こすことがあります。

市販の吐き気止めを使っても良いとされていますが、一方で吐いてしまった場合には注意が必要です。

服用から2時間以内に吐いてしまった場合には、ピルが体に吸収されていない可能性があります。再度服用が必要になるケースもありますので、医療機関に相談しましょう。

頭痛・片頭痛

中用量ピルに含まれるエストロゲンには、血管を拡張させる作用があるため、頭痛を引き起こすことがあります。

頭痛が現れた場合は、市販の頭痛薬を使っても良いとされています。ただし、アセトアミノフェンが含まれる薬は、ピルの効果を薄める可能性があるため注意が必要です。

また、水分不足によって頭痛が悪化する可能性がありますので、十分な水分補給を心掛けましょう。

胸の張り・痛み

エストロゲンには乳腺の発達を促進する作用があるため、胸が張ったり痛みを感じたりすることがあります。

長引く場合は医療機関への受診をおすすめしますが、温かいタオルや温湿布を胸に当てたり、ぬるめのお湯に浸かったりすることで、痛みが軽減することもあります。

情緒の変化

中用量ピルによってホルモンバランスが変化すると、気分の浮き沈みが起こることがあります。

特に、生理3~10日前に心身の不調が現れる月経前症候群(PMS)が起こりやすい方は、さらに注意が必要です。

情緒が不安定になときは、深呼吸をするなどリラックスすることを心掛けましょう。軽い運動や健康的な食事、十分な睡眠を意識することも大切です。

血栓症のリスク

中用量ピルの最も重大なリスクは「血栓症」です。

血栓症とは、なんらかの原因で血管に血の塊ができて、血管が詰まってしまう病気です。

ピルに含まれるエストロゲンには、血が固まりやすくなる作用があるとされています。

特に35歳以上の方や、1日に15本以上タバコを吸う方、糖尿病などの持病がある方は注意が必要です。服用前に、必ず医師に相談しましょう。

中用量ピルはどこで購入できる?

中用量ピルは「医療用医薬品」に該当するため、薬局やドラッグストアで自由に購入することはできません。

購入するためには、医師の処方を受ける必要があります。

医療機関(婦人科・産婦人科)での診察

中用量ピルの処方を受けたい場合は、医療機関(婦人科・産婦人科)に行くのが一般的です。

基本的には問診や検査を行ったあとに、処方という流れになります。

副作用やリスクに関する疑問点をその場で解決できるので、初めてピルを服用する方にも安心です。

オンライン診察

現在は、オンライン診療を受け付けているクリニックが増えています。

自宅から医師の診察が受けられるため、移動の手間がなく便利です。診察後は、クリニックと提携している調剤薬局から薬が郵送されます。

また、24時間いつでも予約を受け付けているクリニックもあり、忙しい方にとっても利用しやすいサービスとなっています。

ただし、オンライン診療では医師による直接触診や対面診療を行えないため、診療可能な内容が限られる可能性があります。事前に確認しておくと良いでしょう。

中用量ピルは保険適用になる?

中用量ピルが保険適用となるかは、服用の目的によって異なります。

「生理日移動」や「避妊」を目的に服用する場合は、病気の治療目的ではないため、保険は適用されず、全額自己負担となります。

一方、「月経困難症」の治療を目的とする場合は、保険適用になることがあります。その際は3割負担で処方を受けることが可能です。

中用量ピル(プラノバール)の値段

保険が適用される場合は診察料も含めて1シート1,000円~2,000円で受け取ることが可能です。一方、自由診療の場合は3,000円~5,000円が一般的です。

ただし、生理日移動を目的に中用量ピルが処方される場合は、1シート(通常21錠)よりも少ない数(2~10錠程度)で処方されることがほとんどで、価格もその分安くなります。

処方される錠数にもよりますが、1,000円前後で済む場合もあるでしょう。

Q&A

Q1.中用量ピルを飲み忘れたらどうすればいい?

飲み忘れて24時間以内に気付いた場合は、その時点で早めに服用し、その後は通常通りに服用を続けます。

ただし、数日間飲み忘れた場合は、続けて服用しても生理移動の効果が得られない可能性がありますので、医師に相談しましょう。

Q2.中用量ピル(プラノバール)は太るって本当?

「ピルを飲むと太る」と言われることがありますが、実際はピル自体が直接的に体重増加を引き起こすことはありません。

ただし、ピルに含まれる女性ホルモンによって、むくみや食欲増進に繋がりやすくなると言われています。

体に水分が溜まって体重が増えたように感じたり、食欲が増えて摂取カロリーが増える可能性はあります。

Q3.中用量ピルと低用量ピルは併用できる?

中用量ピルと低用量ピルの併用は、推奨されていません。

どちらも女性ホルモンが含まれているため、過剰摂取となり、副作用が現れやすくなるリスクがあります。

併用に関して自己判断は禁物ですので、必ず医療機関に相談しましょう。

Q4.アフターピルで生理日の移動はできる?

アフターピル(緊急避妊薬)は、避妊に失敗した後に使用する緊急的な避妊法であり、生理日の移動を目的に服用することは出来ません。

Q5.中用量ピルを使うと、将来妊娠しにくくなる?

一般的に、中用量ピルは将来の妊娠能力に影響を与えません。

ピルの服用を中止すると、通常はすぐに排卵が再開されます。ただし、ピルをやめた直後に体が正常な月経周期に戻るまで少し時間がかかる場合もあります。

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